分子細胞生物学

PubMedID 31625181
Title Mammalian Atg8 proteins regulate lysosome and autolysosome biogenesis through SNAREs.
Journal The EMBO journal 2019 Nov;38(22):e101994.
Author Gu Y,Princely Abudu Y,Kumar S,Bissa B,Choi SW,Jia J,Lazarou M,Eskelinen EL,Johansen T,Deretic V
  • Mammalian Atg8 proteins regulate lysosome and autolysosome biogenesis through SNAREs.
  • Posted by 大阪市立大学 医学研究科 分子病態学 寺脇 正剛
  • 投稿日 2019/12/05

哺乳類におけるLC3やGABARAPタンパクはオートファジー制御に関わるATG8ファミリーに相当する分子である。これまでLC3やGABARAPは隔離膜の伸長や閉鎖などに関与することが指摘されているが、その詳細な機能はまだ不明である。筆者らは以前の報告でオートファゴソームとリソソームの融合時に機能するSNAREタンパクStx17がLIRドメイン(LC3-interacting Region)を持っており、LC3と相互作用することでオートファゴソームにリクルートされることを報告している。このことから筆者らは他のSNAREタンパクにもLIRドメインを持つものがあるのではないかと考え、Syntaxin、SNAP、VAMP、SECといったSNAREタンパクからLIRドメインを持つと考えられるタンパクをバイオインフォマティクスにより検索した。その結果、複数のSNAREタンパクにLIRドメインと予測される部位が同定された。そこで筆者らはそれらのSNAREタンパクの配列を持つ20merの合成ペプチドアレイを作製し、Atg8ファミリー分子のひとつであるGABARAPと相互作用する分子をスクリーニングしたところ、Stx16、Stx6、VTI1aを含む様々なSNAREタンパクにおいてGABARAPとの相互作用が認められた。またその相互作用部位には新規のLIRモチーフが含まれていた。これまでにStx16、Stx6、VTI1aは複合体として機能し、エンドソームからトランスゴルジへの逆行輸送に関わっていることが示唆されている。筆者らはこの3分子に注目し、Atg8ファミリー分子との機能的相関についてさらに検討を進めた。まずプルダウンアッセイにより全長のStx16がLC3-CやGABARAP、GABARAPL1と強く相互作用することを確認した。この相互作用には今回見出された新しいLVLVという配列がStx16とAtg8の相互作用に関わっており、これらの配列に変異を入れると両者の相互作用は失われたことから、この配列は新規のLIRモチーフであると考えられた。オートファゴソームとリソソームの融合に関わるStx17の欠損(KO)細胞やStx16の単独KO細胞では飢餓により誘導されたオートファジーフラックスは完全には停止しなかったが、Stx17とStx16の二重欠損細胞(DKO)では、フラックスが完全に停止した。このことはStx17とStx16は共にオートファゴライソソームの形成に必要であることを示している。そこで筆者らはStx16とStx17の二重欠損が選択的オートファジーに与える影響について検討したところ、マイトファジー、ペキソファジー、ゼノファジー、リボファジーの全てにおいて活性が低下していることが確認された。飢餓によるバルクのオートファジーのみならず、選択的オートファジーにも影響が出ており、Stx16とStx17は広範なオートファジーのシステムに関わっていると言える。そこで筆者らはStx16のリソソームの機能への関与について検討を加えた。Stx16 KO細胞ではLC3のドット状構造(初期のオートファゴソーム)は増えているものの、LC3とリソソームマーカーであるLAMP2の共局在は顕著に減少していた。またStx16 KO細胞ではトータルのLAMP1やLAMP2の発現が低下する傾向にあった。LAMP1やLAMP2はトランスゴルジからリソソームに運ばれることが報告されているが、Stx16 KO細胞ではLAMP1とLAMP2はリソソームではなくTGNに蓄積していることが明らかとなった。Stx16はエンドソームからトランスゴルジへの逆行輸送に関わっているVAMP3やVAMP4と相互作用しており、飢餓処理時にはリソソーム上のSNAREであるVAMP8との相互作用が増加した。これらの事実はStx16がリソソームの機能性分子であるLAMPのトラフィッキングを介したリソソームの機能的成熟に必要な分子であることを示唆している。次に筆者らはリソソームの機能の一環としてリソソーム上で機能するmTORの活性について調べた。その結果Stx16 KO細胞では基質である4E-BP1やULK1のリン酸化が減弱し、かつリソソームへのmTORの局在も低下していた。これらの結果はStx16の欠失がリソソームを足場とするmTORの機能にも影響を与えていることを示している。また筆者らは、Lysotrackerで酸性分画を調べたところ、野生型の細胞とStx16 KO細胞との間に量的な差は認められなかったが、Stx16欠細胞では酸性分画がTGN近傍に局在していることが明らかとなり、リソソームの局在にも異常があることを指摘している。飢餓時にはStx16とリソソーム上のLAMP2との相互作用が増強するが、筆者らはAtg8ファミリー分子のKO細胞ではこれらの相互作用が顕著に減弱することを見出した。またStx16に新規に同定されたLIRモチーフに変異を入れた系においてもStx16とLAMP2の共局在が減弱していた。これらのデータはStx16がAtg8ファミリーとの相互作用を介してLAMP2のトラフィッキングを制御していることを示唆している。筆者らはこの論文において複数のSNAREタンパクがLIRを持っており、それらがAtg8ファミリー分子と結合して機能を発揮する可能性を示した。今後もそれらSNAREタンパクの解析を通じてAtg8ファミリー分子の新しい機能が明らかにされるかもしれない。

返信(0) | 返信する