文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)平成28年度~平成32年度
PubMedID | 32049023 |
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Title | SENP3 Suppresses Osteoclastogenesis by De-conjugating SUMO2/3 from IRF8 in Bone Marrow-Derived Monocytes. |
Journal | Cell reports 2020 Feb;30(6):1951-1963.e4. |
Author | Zhang Y,Yang K,Yang J,Lao Y,Deng L,Deng G,Yi J,Sun X,Wang Q |
骨代謝は破骨細胞による骨形成と骨芽細胞により骨形成のバランスにより維持される。骨粗鬆症は破骨細胞形成の亢進により引き起こされると考えられており、なかでも閉経後骨粗鬆症は最も良く知られている。エストロゲンは骨量を維持する働きがあり、閉経によりエストロゲン分泌が低下すると骨密度が減少するため、閉経は骨粗鬆症の要因と考えられる。破骨細胞活性化の阻害は、閉経後骨粗鬆症の治療の一つであり、これまでにも様々な破骨細胞阻害剤が骨量減少を抑制すると報告されたが、これらの阻害剤は子宮内膜損傷のような副作用も引き起こす。したがって、新たな治療戦略と破骨細胞活性化制御の詳細な機構の解明が必要である。
SUMO化は翻訳後修飾の一つで様々な細胞内プロセスに関係する。SUMO化はユビキチン化と同様に複数の酵素E1, E2, E3が関与する多段階の反応から成り、可逆的で、脱SUMO化酵素であるSENPにより脱SUMO化される。最近の研究で、SUMO化とSENPsが骨代謝に影響を与えるという報告があるが、SUMO化と破骨細胞分化の関連はほとんど明らかにされていない。
筆者らはまずSUMO化が破骨細胞分化において役割を果たすかどうか検討したところ、SUMO2/3によるSUMO化が増加した。さらにSenp3とSenp5の発現は顕著に減少したことから、破骨細胞分化において、SUMO2/3によるSUMO化が亢進し、それがSenp3とSenp5の発現減少に関連する可能性を明らかにした。また、骨髄由来単球特異的なSenp3欠損マウスは、骨吸収が亢進した骨量減少を呈し、加えて、卵巣摘出でより重篤な骨減少を呈した。
次に筆者らは、骨髄由来単球特異的にSenp3を欠損させたマウスから骨髄由来単球を単離し、破骨細胞へ分化させたところ、破骨細胞分化が亢進することを明らかにした。Senp3欠損マウスで破骨細胞分化が促進する分子機構を解明するために、SENP3の基質同定に焦点を当てた。SENP3がIRF8のK310における脱SUMO化を触媒し、NFATc1の発現と破骨細胞形成を抑制することを明らかにした。
さらに、骨髄由来単球にSENP3を過剰発現させると、NFATc1の発現が減少し、破骨細胞分化を減少させたことから、SENP3が骨粗鬆症から骨を保護する重要な因子であると結論づけた。
本論文では述べられていなかったが、実際に閉経後骨粗鬆症患者においてSENP3の発現量が減少しているのかどうかとても興味深く、筆者らの今後の研究に期待したい。
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