分子細胞生物学

PubMedID 32160526
Title A Genome-wide ER-phagy Screen Highlights Key Roles of Mitochondrial Metabolism and ER-Resident UFMylation.
Journal Cell 2020 03;180(6):1160-1177.e20.
Author Liang JR,Lingeman E,Luong T,Ahmed S,Muhar M,Nguyen T,Olzmann JA,Corn JE
  • A Genome-wide ER-phagy Screen Highlights Key Roles of Mitochondrial Metabolism and ER-Resident UFMylation
  • Posted by 東京大学 医科学研究所 分子シグナル制御分野 櫻井 文香
  • 投稿日 2020/10/16

オートファジーは様々なストレスによって誘発されて、損傷した細胞成分や過剰な細胞成分を除去する。オートファジーによるオルガネラ全体の除去は、細胞の恒常性に必要であり、ミトコンドリアの選択的オートファジー(マイトファジー)中に、損傷したミトコンドリアの表面に存在するタンパク質が、リン酸化とユビキチン化によって標識され、オートファジーが起きる。オルガネラオートファジーの調節不全は、細胞の状態を悪化させ、特に神経細胞などの非再生細胞において、変性疾患に関連するという報告もある。たとえば、PINK1やパーキンなどの主要なマイトファジー遺伝子の変異は、パーキンソン病などの障害と強く関連している。
小胞体(ER)は、カルシウムの貯蔵、脂質の生合成、分泌タンパク質と膜タンパク質の成熟と輸送など、多くの細胞機能において重要な役割を果たす。 ERは、ER関連分解(ERAD)やリソソーム関連分解(ERLAD)などの複数の品質管理メカニズムによって調節されている。小胞体の選択的オートファジー(ER-phagy)は、酵母において観察されてきたが、哺乳類では最近報告されたばかりである。
本論文では、CRISPRiレポーターによるスクリーニングを実行して、ER-phagyに関わる新しい因子を発見した。ER-phagyを積極的に調節する2つの経路、
(1)ミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)
(2)小胞体表面におけるUFMylation(=UFM化)
について深く調査した。 OXPHOSの阻害は細胞のエネルギーレベルを低下させ、一般的なオートファジーを刺激するが、ER-ファジーは抑制する。また、このOXPHOS依存性ER-phagyは、通常のオートファジーとは異なる、AMPKに依存しない。さらに、ユビキチン様の翻訳後修飾であるUFM化がER-phagyに必要であることを発見した。DDRGK1は、PINK1のように、UFM化機構をER表面に動員する。 DDRGK1は、これらのサブドメインにあるLIR / GIM受容体によって媒介されるER-phagyに重要な役割を果たす。UFM化依存性のER-phagyを妨害すると、誤って折りたたまれたタンパク質が蓄積し、IRE1aシグナル伝達を介して小胞体ストレス応答(=UPR)が誘導される。
ER-phagy制御因子同士の関連を明らかにし、オルガネラ間相互作用と小胞体に局在する因子がER-phagyをどのように仲介するかを示している。
本論文は、これまでに報告されてこなかった酸化的リン酸化とER-phagyの相関を示唆した点で大きな意義がある。しかし、酸化的リン酸化の破綻はER-phagyに限らず細胞に様々な悪影響を与えるため、ER-phagy阻害のメカニズムに関しては多角的な解析が必要である。また、ER表面でのUFM化に関しても、小胞体ストレス応答との関係が不明確であるため、さらなる研究が望まれる。

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