文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)平成28年度~平成32年度
PubMedID | 31995728 |
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Title | AMPK, a Regulator of Metabolism and Autophagy, Is Activated by Lysosomal Damage via a Novel Galectin-Directed Ubiquitin Signal Transduction System. |
Journal | Molecular cell 2020 03;77(5):951-969.e9. |
Author | Jia J,Bissa B,Brecht L,Allers L,Choi SW,Gu Y,Zbinden M,Burge MR,Timmins G,Hallows K,Behrends C,Deretic V |
AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)は、真核生物において細胞のエネルギーセンサーとして働き、ATPレベルの恒常性を保つ代謝調節因子である。AMPKはATPの減少を感知してATPの消費から生産へと代謝を切り替え、細胞のエネルギーバランスを保っている。AMPKは主に代謝に関与する因子としてよく知られているが、オートファジーへの関与も報告されている。
オートファジーには代謝経路と品質管理の2つの役割がある。前者は飢餓時に働き、後者はタンパク凝集体及び機能不全オルガネラを選択的に除去する際に働く。障害リソソームはオートファジーによって除去される機能不全オルガネラの一つであるが、オートファジーが機能する上でリソソームは欠かせないため、障害リソソームの除去及び再形成は細胞内の恒常性維持に重要である。また、リソソーム障害においてはAMPKが活性化されることが知られている。
リソソーム障害ではガレクチンとユビキチンという2つの重要な因子が活躍する。ライソファジーにおいてガレクチンとユビキチンは”eat meシグナル”として働き、オートファジー受容体やオートファジー機構をリクルートすると考えられているが、詳細なメカニズムについては未だ不明であった。本論文で筆者達は、リソソーム障害におけるAMPKの活性化にガレクチンとユビキチンが協調的に作用し、オートファジーを誘導することを示した。つまり、ユビキチン機構と膜のレクチンとの間の伝達システムを明らかにした。
まず筆者達は数種のガレクチンをノックダウンし、リソソーム障害におけるユビキチン化に変化があるか検証を行なった。すると、Gal9をノックダウンした際にユビキチン化の有意な減少が確認された。さらに、リソソーム障害時にGal9と障害リソソームは結合しており、リソソームとGal9との結合に重要なドメインを欠損させると、リソソーム障害時のユビキチン化が減少することを見出した。また、脱ユビキチン化酵素USP9Xがリソソーム障害時のユビキチン化に関与しており、Gal9存在下ではUSP9Xがリソソームから脱離されることを明らかにした。
次に筆者達は、Gal9及びUSP9XとTAK1との関係に着目した。Gal9の量の増加に応じてTAK1のユビキチン化も増加し、更にはGal9を欠損させるとTAK1のリン酸化も減弱することを見出した。AMPKの上流のキナーゼとしてはLKB1、CaMKK2、TAK1の3つが報告されているが、TAK1によるAMPKの活性化については多くの部分が未解明である。筆者達はリソソーム障害における初期のAMPKの活性化はTAK1により引き起こされ、障害が持続するとLKB1が活性化することを明らかにした。加えて、Gal9が障害リソソームへのAMPKの移行に重要であることも見出した。
本研究は、リソソーム障害においてガレクチンとユビキチンという2つの因子が協調的に働くことを見出した。さらに、未解明の点が多かったTAK1によるAMPKの活性化についても明らかにしたという点で意義がある。また、リソソームの構成分子にタグを付加して細胞内で発現させ、タグによって精製することでリソソームの画分を得るLysoIPという手法が使用されており、手法の面でも興味深い。しかし、本論文では元々Gal9とUSP9Xは結合しており、リソソーム障害時にはUSP9XはGal9から遊離し、Gal9はリソソームへと移行するというモデルを提唱しているが、その点についてより経時的な検証が必要であると感じた。またTAK1の関与についてTAB2だけでなくTAB1についても解析を行い、より詳細なメカニズムの解明が望まれる。
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