分子細胞生物学

PubMedID 29227477
Title The deubiquitinating enzyme TNFAIP3 mediates inactivation of hepatic ASK1 and ameliorates nonalcoholic steatohepatitis.
Journal Nature medicine 2018 Jan;24(1):84-94.
Author Zhang P,Wang PX,Zhao LP,Zhang X,Ji YX,Zhang XJ,Fang C,Lu YX,Yang X,Gao MM,Zhang Y,Tian S,Zhu XY,Gong J,Ma XL,Li F,Wang Z,Huang Z,She ZG,Li H
  • 脱ユビキチン化酵素A20が肝細胞中のASK1を不活性化してNASHを改善する
  • Posted by 東邦大学 医学部 生理学講座統合生理学分野 大島 大輔
  • 投稿日 2018/04/12

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に至るまでの進行過程で、生活習慣病による脂肪肝や肥満、糖尿病、高血圧などの症状を伴っている。これまでNASHに有効な薬剤で保険適用されているものはなく、肝臓の代謝異常・慢性炎症・線維化に対応するシグナル伝達経路に対する分子標的薬が理想的であると考えられている。NASHの成立には、ASK1(apoptosis signal-regulating kinase 1)の活性化が重要であるとされており、有望な治療標的の1つとされている。しかしながら、NASHにおけるASK1活性化の分子機構は未だ不明であり、ASK1が適切な治療標的であるかは評価されていない。

 著者らは、ASK1と相互作用するタンパク質のスクリーニングを免疫沈降と質量分析を用いて行った。その結果、脱ユビキチン化酵素A20のOUTドメインとASK1のTRXドメインが結合していること、A20がASK1のK11, K29, K63型ユビキチン鎖を分解することでASK1-p38-JNK1/2経路の活性化を抑制すること見出した。肝細胞におけるA20を介したASK1-p38-JNK1/2経路の抑制は、NAFLDモデルマウスの病態に関連した代謝障害や炎症応答が抑制された。これらの結果から、A20はASK1に対する直接的な内在性抑制因子であることが示された。
 さらにNASHの治療モデルとして、モデル動物(マウス、およびカニクイザル)の肝臓にA20遺伝子をアデノ随伴ウイルスで導入すると、NASH病態の進行を大幅に遅延させることに成功した。

 脱ユビキチン化酵素A20が疾患と関連する重要なシグナル制御因子であることが再認識された。NASHの多様な病態に対して、シグナル伝達経路のハブに位置するASK1の制御が効果的であった点は興味深い。同グループは以前にもASK1二量体化阻害によるNASHの治療法の開発を試みており、阻害様式の違いと治療効果について今後の発展が期待される。

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