文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)平成28年度~平成32年度
PubMedID | 28953873 |
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Title | Inflammasome-driven catecholamine catabolism in macrophages blunts lipolysis during ageing. |
Journal | Nature 2017 10;550(7674):119-123. |
Author | Camell CD,Sander J,Spadaro O,Lee A,Nguyen KY,Wing A,Goldberg EL,Youm YH,Brown CW,Elsworth J,Rodeheffer MS,Schultze JL,Dixit VD |
老いに伴ってカテコールアミンが減少し、トリグリセロール分解によるエネルギー獲得は低下していく。そのため、老いによって内蔵脂肪の増加だけでなく、運動能力の低下、低温や飢餓への対応能力の低下などの症状が見られるようになる。老化した個体中の脂肪組織ではカテコールアミンのシグナル伝達が正常に行われるという報告がなされているが、脂肪分解が減弱する機構はこれまで知られていなかった。
絶食によりカテコールアミンの作用で血中のグリセロールと遊離脂肪酸が上昇するが、老化した個体ではそれらの値が減少する。脂肪組織常在型マクロファージ(ATM)に着目すると、老化に伴ってATMの数が減弱するだけでなく、脂肪分解に抑制的に機能することが示された。そこで老化マウスのATMの遺伝子発現を網羅的に解析すると、インフラマソーム依存的な炎症応答に必須のNLRP3経路が活性化されており、その結果としてカテコールアミンの分解が促進して脂肪分解が抑制されること、またNLRP3欠損マウスでは、老化に伴う脂肪分解が回復することがわかった。
次に、マクロファージによる炎症応答とカテコールアミン分解との関係に着目して解析を行った。その結果、脂肪組織の局所でATMが活性化してGDF3を分泌し、脂肪細胞に作用してMAOAを介した分解が抑制されることがわかった。またATMは交感神経と近接する部位に分布することを明らかにして、交感神経から分泌されるカテコールアミンを分解することが示唆された。
慢性炎症と疾患との関連は数多く報告されており、本研究においても老化現象と脂肪組織中のマクロファージの慢性炎症の関係が新たに示された。脂肪組織中の炎症を抑制することで脂肪分解を促進する治療法の可能性が示されたが、必ずしも個体レベルで若返りと等価な現象が見られてはいない。組織常在型マクロファージは様々な臓器で見出されているが、本研究では脂肪組織中の交感神経と相互作用して代謝の調整を行うという固有の機能が新しい発見で、免疫細胞の役割として興味深い。
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