分子細胞生物学

PubMedID 28886380
Title NF-κB c-Rel Is Crucial for the Regulatory T Cell Immune Checkpoint in Cancer.
Journal Cell 2017 Sep;170(6):1096-1108.e13.
Author Grinberg-Bleyer Y,Oh H,Desrichard A,Bhatt DM,Caron R,Chan TA,Schmid RM,Klein U,Hayden MS,Ghosh S
  • NF-κB c-Rel Is Crucial for the Regulatory T Cell Immune Checkpoint in Cancer.
  • Posted by 沖縄科学技術大学院大学 Cell Signal Unit 森川遥香
  • 投稿日 2018/05/19

CD⁴⁺Foxp³⁺制御性T細胞(Tregs)は、抗腫瘍応答を抑制する役割をもつことは知られているが、Tregの発達及びホメオスタシスを担っている分子シグナルに関しては不明な点があり、依然として解明が必要である。先行研究において、転写因子NF-κBのc-RelサブユニトがFoxP3の発現及びTregの胸腺における分化に重要であり、c-Rel欠損マウスのリンパ球は免疫学的欠陥を示すことが知られており、NF-κB c-Relのみを標的とすることができる阻害剤はNF-κB阻害薬が持つ副作用を回避する可能性が高いと考えられている。

 筆者らは、癌においてc-Rel阻害がTreg活性を選択的に調節することが可能であるという仮説を検証した。
 まず、NF-κBサブユニットがTregサブセットにおいて異なる役割を果たすかどうかを調べるために、RNAシークエンスを用いてWT aTregとrTregの遺伝子発現を分析し、WT Treg、p65 KO及びc-RelKO Tregの遺伝子発現プロファイルと比較した。この解析により、c-RelがaTregの分化において中心的な役割を果たしており、c-Rel欠損が抗腫瘍応答に影響を及ぼしていることが示唆された。次に、抗腫瘍応答中のTregにおけるp65及びc-Relの役割を試験するために、WTマウスとNF-κB複合体中のp65あるいはc-Rel欠損マウスにおけるB161F1メラノーマの増殖を比較した。結果、c-RelがCD8⁺Tによって調節される抗メラノーマ防御免疫応答の阻害に必要とされるTregの特定の遺伝子を制御することが示された。さらに、筆者らは、c-Rel阻害がTregによって制御されている抗腫瘍免疫を阻害すると仮定し、T細胞におけるc-Rel発現の阻害剤として作用することが示唆されているペントキシフィリン(PTXF)処理がTregに対してどのような影響を与えるのか試験した。その結果、PTXF処理はTregの生存には影響を与えず、Tregの内因性の機能を損ない、またTregのホメオスタシスに影響を及ぼすことが明らかになった。また、PTXFのようなc-Rel阻害化合物の投与はTregによって制御される腫瘍免疫寛容を破壊し、c-Rel欠損Treg同様に抗腫瘍応答を増大させると予測し、WTマウスにB16F1メラノーマ細胞を移植し、腫瘍細胞接種1日前から毎日PTXFまたはPBSを毎日注射し比較した。その結果、c-Rel阻害がTreg機能を阻害し、Tregによって制御される腫瘍耐性を予防することができた。最後に、PTXFを用いたTregの標的化がPD-1阻害に対して有益な効果を増強できるか否かを検討した結果、c-Rel阻害薬PTXFあるいはIT-603及び抗PD-1を用いた併用療法は、メラノーマ増殖の減少及びT細胞の浸潤及び活性化の増加をもたらした。

これらの結果は、他の免疫チェックポイント阻害剤と併用したc-Rel阻害剤の使用の前臨床的証拠を提供している。

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