分子細胞生物学

PubMedID 29724957
Title C1q restrains autoimmunity and viral infection by regulating CD8 T cell metabolism.
Journal Science (New York, N.Y.) 2018 05;360(6388):558-563.
Author Ling GS,Crawford G,Buang N,Bartok I,Tian K,Thielens NM,Bally I,Harker JA,Ashton-Rickardt PG,Rutschmann S,Strid J,Botto M
  • C1qはCD8+T細胞の代謝を制御することで自己免疫とウイルス感染を抑制する
  • Posted by 北海道大学 大学院医学研究院 生化学分野医化学教室 渡部 昌
  • 投稿日 2018/05/30

C1qは補体系古典的経路の活性化トリガーとなるC1複合体の構成因子であり、抗原と複合体を形成した抗体分子にC1qが結合することで経路が駆動します。
その欠損は全身性エリテマトーデス(SLE)の病態進展と関連があることが知られており、そのメカニズムは古典的経路の異常によって説明が為されてきました。
しかし、下流因子であるC3の欠損はSLEの素因とはならないため、他の機構の存在が示唆されていました。
本論文では、C1qはCD8陽性T細胞のミトコンドリア代謝が変化させることにより、自己抗原への応答を制限することを示しています。
C1qの欠損によりCD8陽性T細胞を介した自己免疫応答が進行し、慢性的なウイルス感染下ではCD8陽性T細胞の異常活性化と致死的な応答を引き起こしていました。
さらに、C1qの欠損により特に記憶CD8陽性T細胞の活性化と細胞死が起こっており、さらにミトコンドリアの代謝能(予備呼吸能)が減少していることがわかりました。
C1qは実際に記憶CD8陽性T細胞の細胞表面受容体(gC1qR)と結合し、細胞内へと移行してミトコンドリアと共局在し、また、記憶CD8陽性T細胞の培養にC1qを添加するとミトコンドリア生合成を司る遺伝子の発現が上昇しており、何らかの形でミトコンドリア生合成を介して代謝を変化させているものと思われました。

C1qのSLEに対する保護的な役割のメカニズムの一端が明らかになったこと、自己免疫応答において持続的なウイルス感染がCD8陽性T細胞を介して関与しうることなど、いくつかの新しい概念を提示しているように思いました。

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