分子細胞生物学

PubMedID 28346439
Title Hippo signalling governs cytosolic nucleic acid sensing through YAP/TAZ-mediated TBK1 blockade.
Journal Nature cell biology 2017 Apr;19(4):362-374.
Author Zhang Q,Meng F,Chen S,Plouffe SW,Wu S,Liu S,Li X,Zhou R,Wang J,Zhao B,Liu J,Qin J,Zou J,Feng XH,Guan KL,Xu P
  • Hippoシグナルによるウイルス応答制御
  • Posted by 大阪市立大学 大学院医学研究科 分子病態学 阿部 貴則
  • 投稿日 2017/07/12

 癌抑制シグナル経路として見つけられたHippoシグナルは、転写コアクチベーターTAP/TAZの機能を制御することで、細胞の数や大きさを制御し、器官のサイズを正常に維持している。Hippoシグナル経路の破綻は器官の異常形成・癌の発症等につながることが知られている。またウイルス核酸に対する免疫応答に重要なI型インターフェロン産生経路は細胞内へ侵入したウイルス由来の核酸をRIG-IやcGAS等の細胞質センサーが認知し、ミトコンドリア上に分布しているMAVSまたは小胞体上に発現しているSTINGへシグナルを伝達する。その結果TBK1を動員し、TBK1のK63ユビキチン鎖修飾・活性化をさせ、転写因子IRF3をリン酸化・ダイマー形成を誘導し、核内へ移行したIRF3がINFβなどのウイルス応答に必要な遺伝子を誘導する。
 今回Zhangらの研究によって、細胞レベルで、栄養欠乏や高細胞密度により誘導されたHippoシグナルがウイルス感染によるインターフェロンβの産生を促進すること、YAP/TAZの過剰発現によりTBK1へのK63ユビキチン鎖修飾が抑制され、TBK1とMAVS、STING、IRF3との作用が阻害されることを示した。また、ウイルスを細胞に感染させた時、 YAP/TAZを過剰発現させた細胞株では感染が増加し、逆にノックダウン・ノックアウトした細胞株では感染が抑制されること、YAPを過剰発現させたゼブラフィッシュの胚はウイルス感染による死亡率が上昇したことが分かった。以上のことからHippo-YAP/TAZシグナル伝達経路とTBK1を介した抗ウイルス応答シグナルはクロストークすることで、厳密に炎症・免疫応答を制御していることが考えられる。さらにHippoシグナルはNFκBシグナル経路を制御することも示唆されているので、Hippoシグナルとその他多くの炎症・免疫応答シグナルとの関連性に今後とも注目である。

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