分子細胞生物学

PubMedID 30158700
Title Cotranslational assembly of protein complexes in eukaryotes revealed by ribosome profiling.
Journal Nature 2018 Sep;561(7722):268-272.
Author Shiber A,Döring K,Friedrich U,Klann K,Merker D,Zedan M,Tippmann F,Kramer G,Bukau B
  • リボソームプロファイリング法によって明らかにされた真核生物における翻訳と同時に行われるタンパク質複合体の組み立て
  • Posted by 北海道大学 大学院医学研究院 生化学分野医化学教室 渡部 昌
  • 投稿日 2018/10/17

タンパク質は合成されたのちに折りたたまれ、多くのものが他のタンパク質と共に複合体を形成します。しかし、このポリペプチドが複合体を形成するステップに関してわかっていることは限られている状況でした。原核生物では、スプリット型ルシフェラーゼをモデルとして用いた研究で、翻訳と同時に組み立てが行われること、さらに両subunitをポリシストロニックにコードし、両subunitの翻訳が空間的に近距離に行われるようにすると組み立て効率が高くなることがわかっていました。一方真核生物においては、NFkB p50-p105のヘテロダイマー形成、p53のホモダイマー形成、CADとICADのヘテロダイマー形成などについては翻訳中に行われていることが示唆されていましたが、証拠となるデータは間接的であり、またどれほど一般性があるのかについても不明でした。

筆者たちはリボソームプロファイリング法の変法であるselective ribosome profiling(SeRP)法を用いて、ヘテロオリゴマーを形成する12の複合体について解析を行いました。SeRP法は、細胞を核酸分解酵素で処理後に解析対象のタンパク質に結合するリボソームを免疫沈降により精製し、リボソーム内に含まれたmRNA断片をNGSによりシークエンスする方法です。対象タンパク質のリボソームへの結合について、翻訳を受けているmRNAの塩基レベルの解像度で明らかにすることができるため、全リボソーム内に含まれるmRNA断片をシークエンスしたデータと比較することで、対象タンパク質が翻訳中の未熟なポリペプチド鎖に結合しているかどうかを解析することができます。
解析の結果、9種の複合体が翻訳中から組み立てがはじまっており、組み立て専用のシャペロンを持つ3種の複合体は翻訳中の組み立ては起こっていないこと、9種の複合体のうち、6種の複合体は組み立てが一方向性に起こることがわかりました。さらに、結合を受ける翻訳中のポリペプチドは、パートナータンパク質の結合がない状況では折り畳みがうまくいかず凝集体を作る、あるいは不安定で分解を受けやすいものが多いという傾向がありました。またこの翻訳中の組み立てはHsp70シャペロンと協調して行われており、シャペロンが翻訳中のペプチドに初めに結合し、成熟したパートナー分子が結合する直前に解離して受け渡していることもわかりました。

多くの複合体がこの方法を採用していることから、翻訳中の複合体の組み立ては一般性のある現象のようです。細胞内の数多ある分子の海の中で、複合体を構成する分子がなぜ間違うことなく正しく相手を見つけることができるのかということは、長年の個人的な疑問でしたが、その疑問の一部が解けたように思います。次の疑問は、結合する分子側がどのように正しく翻訳中(という短い時間枠で)の相手を効率よく見つけているのかという点です。ヘテロオリゴマーではなくホモオリゴマーであれば、1つのmRNAからポリソームという形で断続的に翻訳されているため、空間的に狭い領域に局在することが可能となり正しい相手を探す確率も高くなりそうです。また、subunit同士が原核生物のようにポリシストロニックにコードされていても同様なことが言えると思います。しかしこれにあてはまらない場合はどうなっているのでしょうか。分子同士の結合を促進する戦略の1つは濃度を上げることですので、subunit量の増減とともに、subunit同士を局所に集める仕組み、例えばリボソームの近傍に局在しやすい仕組みなどがあるのでしょうか。気になるところです。

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