文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)平成28年度~平成32年度
PubMedID | 30275335 |
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Title | Coordination of cell migration mediated by site-dependent cell-cell contact. |
Journal | Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2018 Oct;115(42):10678-10683. |
Author | Li D,Wang YL |
細胞の移動は胚発生や創傷治癒などに不可欠で、動物細胞にとって最も重要な機能の一つである。高等動物の体の中で起こる細胞移動が関わる多くの生命現象において、細胞は単独で移動するのではなく、複数で協調しながら集団として移動している。
集団の中で個々の細胞は協調するためにお互いの接触(cell-cell contact)によってコミュニケーションをとっている。細胞移動への細胞同士の接触の効果として、1950年代よりcontact inhibition of locomotion (CIL)がよく知られている。しかし、細胞同士が反発し合うというよりむしろ連なって移動する細胞集団の移動をCILだけで説明するのは難しいと考えられていた。
著者らは細胞程度の幅の通路の中で細胞同士を接触させ、細胞のどこがぶつかるかによって細胞同士の接触の細胞移動への効果が異なることを発見した。すなわち、他の細胞の前端に接触された細胞はCILのように接触してきた細胞から逃げるが、他の細胞の後端に接触された細胞は接触してきた細胞についていったのである。この応答(contact following of locomotion (CFL))は特定の細胞種だけで見られるのではなく、ラット上皮NRK-52E細胞やMDCK細胞 NIH 3T3細胞で観察された。
さらに、Wntシグナル経路の阻害剤NSC668036でCILは阻害されないがCFLは阻害された。また、Y字通路に細胞集団を這わせると、集団を構成する細胞はY字の分岐点で先頭の細胞に従ってみな同じ方向に進むが、NSC668036存在下では両方向に均等に進んだ。細胞同士の接触による相互作用にはCILとは独立に、どうやらWntシグナルで駆動されるCFLが存在し、このCFLが細胞集団運動に貢献しているらしい。
細胞が別の細胞についていくという現象は、細胞性粘菌アメーバでは普通に見らる。単細胞で生活している細胞性粘菌アメーバは周囲に餌がなくなると集合し、多細胞の子実体を形成する。この集合過程で、細胞は先行する細胞の後端に向かって仮足を伸長し連結する。これと同様の現象を著者らは非常にシンプルかつわかりやすい方法で、複数の高等動物細胞種で発見した。
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