分子細胞生物学

PubMedID 30193098
Title Non-canonical Activation of the DNA Sensing Adaptor STING by ATM and IFI16 Mediates NF-κB Signaling after Nuclear DNA Damage.
Journal Molecular cell 2018 09;71(5):745-760.e5.
Author Dunphy G,Flannery SM,Almine JF,Connolly DJ,Paulus C,Jønsson KL,Jakobsen MR,Nevels MM,Bowie AG,Unterholzner L
  • Non-canonical Activation of the DNA Sensing Adaptor STING by ATM and IFI16 Mediates NF-κB Signaling after Nuclear DNA Damage.
  • Posted by 東京大学 医科学研究所 分子シグナル制御分野 塩崎 ゆかり
  • 投稿日 2019/07/09

 自然免疫応答経路の代表的な一つに、cGAS-STING経路が挙げられる。ウイルスや細菌由来のDNAはcGASにより認識され、ATP、GTPからセカンドメッセンジャーcGAMP (cyclic GMP-AMP)を産生する。cGAMPと結合したアダプタータンパク質STINGは小胞体からゴルジ体を経由し、核膜の周辺領域への局在変化を経る。その過程でIKKによるIκBαのリン酸化やセリンスレオニンキナーゼTBK1の活性化を介して、転写因子IRF3、NF-κBが活性化し、炎症性サイトカイン、Ⅰ型IFNなどの産生が誘導される。
 先行研究において筆者らは、病原菌の接触を一番に受ける皮膚表皮のケラチノサイトに着目し、上記の免疫応答経路を解析した。外来DNAやDNAウイルスに対する免疫誘導にIFI16(inteferon gamma inducible protein 16)が必須のタンパク質であり、cGASと結合しcGAMPを介したSTINGのfull-activationや核膜周囲への移行に寄与していることなどを明らかとした。
 本論文では、DNA修復の際に細胞質に流出したDNAが、cGAS-STING経路を介してI型IFNの産生に寄与するという知見から、EtoposideによるDSB(Double Strand Break)とIFI16、cGAS-STINGの関係を調査した。

 STING、IFI16、cGASのknock-out 細胞株にEtoposide刺激を与え、IFNβやIL-6の産生、及びp65の核内移行に、STINGとIFI16が必要であることを見出した。さらに、DSBによるNF-κB活性化の上流に存在するATM、PARPの関与もinhibitorを用いて確認した。しかし、DNAに対する免疫応答と異なり、この免疫誘導経路にcGASは関与しないこと、STINGの移行とそれに伴うTBK1のリン酸化も殆ど生じず、IRF3に比べてNF-κBが大きく活性化していることなどを明らかとした。
 次に筆者らは、Etoposide刺激下において、STINGにTRAF6、IFI16、p53が結合すること、STING 上にTRAF6がポリユビキチン鎖を形成することを免疫沈降で明らかにした。本論文では、このユビキチン鎖にTAK1やTAB2がrecruitされ、NF-κBの活性化を引き起こすことが示唆されている。

 しかしながら、ポリユビキチン鎖を介してではなく、STINGの下流でTAK1が活性化している可能性も考えられる。また、本機構はEtoposideが誘導する、HaCaT細胞特異的な初期免疫応答との言及があるが、皮膚に抗癌剤を暴露しDSBを引き起こす事象は殆ど存在しないため、異なる細胞や刺激でも同様の機構が生じるのか、更なる検討が必要である。

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