分子細胞生物学

PubMedID 29373831
Title Context-Dependent and Disease-Specific Diversity in Protein Interactions within Stress Granules.
Journal Cell 2018 01;172(3):590-604.e13.
Author Markmiller S,Soltanieh S,Server KL,Mak R,Jin W,Fang MY,Luo EC,Krach F,Yang D,Sen A,Fulzele A,Wozniak JM,Gonzalez DJ,Kankel MW,Gao FB,Bennett EJ,Lécuyer E,Yeo GW
  • Context-Dependent and Disease-Specific Diversity in Protein Interactions within Stress Granules.
  • Posted by 東京大学 医科学研究所 分子シグナル制御分野 橋本 夏葉
  • 投稿日 2019/11/01

細胞内の RNA は 2000 もの RNA 結合タンパク質 (RBP) と相互作用し、リボ核タンパク質 (RNP) を形成する。RNP はとても動的であり、例として軸索と樹状突起を仲介するカーゴが挙げられる。一方、細胞が熱刺激やヒ素刺激など特定のストレスに晒されると、その応答機構の一つとして細胞質にストレス顆粒(stress granules : SGs)が形成される。SGs は主に mRNA、RNA 結合タンパク質、および 40S リボソームにより構成される。SGs の形成は二段階に渡ると提唱されている。高密度で安定した SGs “ core “ は初期形成とそれに続く蓄積に関連し、天然編成領域 (IDR) や 低複雑度領域 (LCD) をもつ mRNA は低密度な SGs “ shell “ を形成しており、これらは液-液相分離 (LLPS) に関与している。SGs は細胞の恒常性を維持する働きを担っており、SGs の制御破綻がアルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症 (ALS) など神経変性疾患の原因になることが報告されている。しかしながら、SGs と神経変性疾患の詳しい関係性は明らかになっていない。
本研究では、APEX (Ascorbate Peroxidase) を介したin vivo 近隣標識、定量質量分析及び RBP-focused IF approach を組み合わせ、SGs の構成因子同定を行った。細胞質内に液体として存在する SGs の構成因子を同定することは非常に困難であったが、本分析法によって、SGs タンパク質が密なタンパク質相互作用ネットワークを形成することが見出された。さらに、神経細胞における SGs 構成因子は他の細胞と比較して多様であり、数多くの PQC 因子が含まれることが明らかになった。hnRNPA2B1 や C9orf72 の変異体は ALS における封入代形成に関わるとされているが、このような ALS 関連遺伝子変異体存在下では、神経細胞において細胞体に加え樹状突起にも SGs が形成されることが確認された。この研究を通して、神経細胞と非神経細胞では形成される SGs の構成因子が異なることが示唆された。
細胞ごとの SGs 構成因子の違いを利用して疾患の治療標的とすることで、効率的で副作用の少ない治療法の開発につながると考えられる。

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