分子細胞生物学

PubMedID 29650702
Title RNA buffers the phase separation behavior of prion-like RNA binding proteins.
Journal Science (New York, N.Y.) 2018 05;360(6391):918-921.
Author Maharana S,Wang J,Papadopoulos DK,Richter D,Pozniakovsky A,Poser I,Bickle M,Rizk S,Guillén-Boixet J,Franzmann TM,Jahnel M,Marrone L,Chang YT,Sterneckert J,Tomancak P,Hyman AA,Alberti S
  • RNA buffers the phase separation behavior of prion-like RNA binding proteins.
  • Posted by 東京大学 医科学研究所分子シグナル制御分野 吉岡 大介
  • 投稿日 2019/11/05

神経変性疾患において、FUS familyは異常な相分離を起こすことによって、不可逆的な凝集を起こすことが知られている。神経変性疾患においてFUS familyの核局在シグナルに変異が見つかっており、凝集体は細胞質において観察されることが多く、細胞質への局在変化が凝集体形成に重要であると考えられている。しかし、なぜ細胞質への局在が凝集体形成に繋がるのかについては明らかとなっていなかった。

筆者らはFUS familyは核内では相分離を起こさないが、試験管内では生理的濃度において相分離を起こすことを見出した。このことから核内にFUSの相分離を負に制御する因子が存在していると推測し、検証を行なった。
この負に制御する因子として筆者らは核内のRNA量が多いことに着目した。筆者らはin vitroの実験系においてRNAを添加すると、少量のRNAでは相分離が促進されるが、多量のRNAを添加することによって相分離が抑制されることを見出した。しかし、高次構造を持つRNA(NEAT1)を添加すると相分離が亢進したことから、一部のRNAには相分離を亢進する働きがあると示唆された。
次に筆者らは細胞内でも同様のメカニズムで相分離が抑制されているか検証行なった。RNaseを核内に導入すると、FUSの相分離が促進したことから核内でのFUSの相分離はRNAによって抑制されていることが明らかとなった。また、RNAに結合できないFUSは相分離を起こしやすくなったため、RNAはFUSに直接結合することによって相分離を抑制していると考えられる。
次に筆者らは疾患における異常な凝集体の形成はRNAによって抑制されるか検証を行なった。FUSの疾患で見つかっている変異体の凝集体の形成はRNAを添加することによって抑制されたことから、RNAはFUSの相分離だけでなく、凝集体形成も抑制する可能性が示唆された。

現在まで、相分離によって形成するMembrane-less organelleの多くがRNAを含むことから、RNAは相分離を正に制御すると考えられてきた。今回の論文では過剰な量のRNAは相分離を抑制することを示しており、非常に興味深い論文である。
しかし、FUS family以外のタンパク質の相分離についても同様の抑制機構が働いているかについては更なる検証が必要である。

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