分子細胞生物学

PubMedID 29523821
Title p38-MK2 signaling axis regulates RNA metabolism after UV-light-induced DNA damage.
Journal Nature communications 2018 03;9(1):1017.
Author Borisova ME,Voigt A,Tollenaere MAX,Sahu SK,Juretschke T,Kreim N,Mailand N,Choudhary C,Bekker-Jensen S,Akutsu M,Wagner SA,Beli P
  • p38-MK2 signaling axis regulates RNA metabolism after UV-light-induced DNA damage
  • Posted by 東京大学 医科学研究所 分子シグナル制御分野 鈴木捺乃
  • 投稿日 2019/11/06

UVはピリミジン二量体や6-4光産物といった嵩高いDNA損傷を引き起こし、このような損傷は全ゲノムまたは転写共役ヌクレオチド除去修復によって修復される。ヌクレオチド除去修復の過程や、停止状態の複製フォークで発生する一本鎖DNAは、損傷認識タンパクなどを介してATRやChk1を活性化し、細胞周期チェックポイントに関連する数々の因子を活性化することが知られている。また、UV照射後にはストレス応答の中心的なトランデューサーであるp38も、リン酸化を受け活性化する。
UV照射後のDNA修復の構成要素や調節機序の研究を比較して、転写やRNA代謝を調整するシグナル伝達経路および分子機構についての研究は未だ開始段階である。この論文で筆者らは、複合体を形成しクロマチンに結合することで転写伸長反応を抑制しているNELF-Eが、p38-MK2経路を介してリン酸化を受け、そのリン酸化によってNELF複合体がクロマチンから解離、転写伸長飯能が起こるという主張をしている。

まず筆者らは、SILAC法によるリン酸化プロテアソーム解析を行った。その結果とリン酸化サイト周辺のアミノ酸配列から、UV照射後におけるp38依存的なリン酸化は、p38の下流分子であるMK2およびMK3による寄与が大きいことが示唆された。また、MK2の認識モチーフが14-3-3ファミリーの認識モチーフと類似することから、p38-MK2によってリン酸化されたタンパクへの14-3-3の結合が、UV照射後の一般的な調節機構である可能性を予想した。14-3-3に結合したタンパクについて解析すると、UV照射後、ATP結合タンパクやRNA結合タンパクが14-3-3とp38依存的に結合することが明らかになった。

筆者らは転写伸長反応に関わるRNA結合タンパクであるNELF-Eに着目し、NELF-EがUV照射後にDNA損傷認識に依存してp38-MK2を介してリン酸化され、14-3-3に直接結合することを示唆した。また、UV照射後において、NELF複合体の構成因子がp38活性に依存してクロマチンから解離すること、細胞が損傷から回復するとNELF-Eのクロマチン濃度が回復することを示した。

最後に、UV照射後にはテロメア維持、RNA代謝、細胞周期、DNA修復、RAS/ERKシグナルに関与する遺伝子において、TSSの濃縮されていたRNAポリメラーゼIIがgene bodyに進行することを示した。これらを踏まえて筆者らは、NELF-Eはp38-MK2からリン酸化を受け、14-3-3と一時的に結合し、クロマチンから解離することで、NELF複合体による転写伸長反応の抑制が解除されると結論付けた。

この論文では、NELF-Eのクロマチンからの解離とPolIIのgene body への移行のつながりが不明瞭であり、さらなる検証が必要であると感じた。

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