分子細胞生物学

PubMedID 30773468
Title Glutamine Metabolism Regulates Proliferation and Lineage Allocation in Skeletal Stem Cells.
Journal Cell metabolism 2019 04;29(4):966-978.e4.
Author Yu Y,Newman H,Shen L,Sharma D,Hu G,Mirando AJ,Zhang H,Knudsen E,Zhang GF,Hilton MJ,Karner CM
  • Glutamine Metabolism Regulates Proliferation and Lineage Allocation in Skeletal Stem Cells
  • Posted by 東京大学 医科学研究所 分子発癌分野 坂東 沙弥
  • 投稿日 2020/01/30

骨格幹細胞は骨芽細胞を継続的に供給することで骨恒常性を制御する。しかしある特定の条件下において、骨格幹細胞の分化が不正確に誘導され、または維持されず、結果的に骨芽細胞形成を低下させ、骨量が減少する、重篤な場合であれば骨粗鬆症に陥る。グルタミン代謝は、多様な病的状態において多くの細胞プロセスの重要な制御因子である。グルタミナーゼはグルタミンを脱アミノ化してグルタミン酸を生成し、グルタミン代謝の律速段階を担う。

著者らは、遺伝的、代謝的アプローチを用いてグルタミナーゼとグルタミン代謝が骨格幹細胞における骨芽細胞と脂肪細胞への分化方向性の決定と、骨形成に重要であることを明らかにした。トランスアミナーゼ依存的なα-ケトグルタル酸の産生が骨格幹細胞の増殖と分化方向の決定に必要であることを示した。グルタミナーゼ活性を刺激することは、高齢者の骨格幹細胞を増加させ、骨芽細胞分化の亢進と骨量増加を引き起こす治療的アプローチになり得る可能性を見出した。

本論文で用いていた代謝的アプローチは興味深かった。グルタミン代謝は多様な病的状態においての制御因子になっていることから、それらの病気における骨形成の状態が気になった。本論文では、グルタミン代謝がどのような分子機構で骨格幹細胞における分化方向性決定や骨形成に関与するのかについての解明には至っていないので著者らの今後の研究に期待する。

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