分子細胞生物学

PubMedID 31289211
Title The L-type amino acid transporter LAT1 inhibits osteoclastogenesis and maintains bone homeostasis through the mTORC1 pathway.
Journal Science signaling 2019 Jul;12(589):.
Author Ozaki K,Yamada T,Horie T,Ishizaki A,Hiraiwa M,Iezaki T,Park G,Fukasawa K,Kamada H,Tokumura K,Motono M,Kaneda K,Ogawa K,Ochi H,Sato S,Kobayashi Y,Shi YB,Taylor PM,Hinoi E
  • The L-type amino acid transporter LAT1 inhibits osteoclastogenesis and maintains bone homeostasis through the mTORC1 pathway.
  • Posted by 東京大学 医科学研究所 分子発癌分野  坂東 沙弥
  • 投稿日 2020/03/09

 骨代謝は、骨形成を担う骨芽細胞と骨吸収を担う破骨細胞により制御される。破骨細胞と骨芽細胞のバランスが崩れることで、骨粗鬆症や骨大理石病などの骨疾患を引き起こす。L-type amino acid transporter (LAT1) はSlc7a5によりコードされるアミノ酸トランスポーターの一種であり、ロイシンやイソロイシンなどの大型の中性アミノ酸を細胞内へ輸送する働きを持つ。筆者らのグループは以前、アミノ酸が骨格の発達や骨恒常性に重要であることを明らかにしたが、LATが骨代謝を維持する機構は解明されてなかった。
 筆者らはまず、LAT1が破骨細胞と骨芽細胞で機能するかどうかを、放射標識したアミノ酸の骨芽細胞及び破骨細胞への取り込み量を調べる事により検討した。LAT1を含むアミノ酸トランスポート機構は骨芽細胞、破骨細胞の両方で活性化したが、LAT1阻害剤により、その取り込みは破骨細胞でより顕著に減少した。さらに、閉経後骨粗鬆症モデルマウスにおいて、破骨細胞におけるSlc7a5の発現が顕著に減少した。
 次に、筆者らは、骨芽細胞特異的及び破骨細胞特異的Slc7a5欠損マウスを作製し、骨恒常性維持におけるLAT1の生理的意義の解明を目指した。骨芽細胞特異的Slc7a5欠損マウスでは骨量に差は見られなかったものの、破骨細胞特異的Slc7a5欠損マウスでは骨量が顕著に減少した。
 さらに、筆者らはin vitro実験により、LAT1が破骨細胞に及ぼす影響を詳細に調べた。Slc7a5を欠損させた骨髄中マクロファージを破骨細胞へ分化させると野生型と比較して顕著な増加がみられた。またSlc7a5欠損は細胞の増殖やアポトーシスに影響を及ぼさなかった。
 筆者らは、LAT1依存的な破骨細胞形成に重要な因子としてmTORC1を明らかにした。LAT1-mTORC1がAkt-GSK3β経路を介してNFATc1の核内蓄積、及びcanonical NF-κB経路を介してNfatc1の発現を制御していることを解明した。
 以上の結果より、LAT1が細胞増殖や生存に関係無く、破骨細胞形成を負に制御することで骨恒常性維持において重要な役割を果たすことが示唆された。
 この論文を読み、実際のヒトの疾患においてLAT1が関連した疾患があるのかどうか気になった。筆者らの研究は、骨粗鬆症や関節リウマチなどの破骨細胞過剰活性化による骨疾患の治療の開発に繋がることから、今後の展開に期待する。

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