その他

PubMedID 32391793
Title AirID, a novel proximity biotinylation enzyme, for analysis of protein-protein interactions.
Journal eLife 2020 May;9():.
Author Kido K,Yamanaka S,Nakano S,Motani K,Shinohara S,Nozawa A,Kosako H,Ito S,Sawasaki T
  • AirID, a novel proximity biotinylation enzyme, for analysis of protein-protein interactions.
  • Posted by 愛媛大学 プロテオサイエンスセンター 城戸 康希
  • 投稿日 2020/08/02

タンパク質は生体内において、複数のタンパク質が相互作用することで多彩な生理機能を制御している。そのため、相互作用タンパク質の同定技術は、タンパク質研究において欠かせないものである。網羅的に相互作用タンパク質を同定する技術の一つとして、近位依存性ビオチン化(BioID)法が報告されている。この技術に利用されるBioID酵素は、大腸菌由来のビオチンリガーゼBirAに変異を導入することで作製されており、近傍のタンパク質を網羅的にビオチン標識することが可能である。そのため、BioID酵素を標的タンパク質へ融合することで、相互作用したタンパク質をビオチン標識し、質量分析による網羅的な相互作用タンパク質の同定が可能となる。現在、BioID酵素として、BioID、BioID2、TurboIDの3種類が報告されている。しかしながら、BioIDとBioID2は活性が低く、16時間以上もの反応時間を必要とする。そしてTurboIDは、短時間での反応が可能であるものの、非相互作用タンパク質までもビオチン化してしまうことや長時間の反応を行うと細胞への毒性を示すことが知られている。そのため、本研究では、これらの問題点を補い得る新たなビオチン化酵素の開発を行なった。
In silicoにおける進化工学的な手法により、BirAの祖先型配列を獲得した。この祖先型BirAを用いて、新たなBioID酵素を獲得し、AirID (ancestral BirA for proximity-dependent biotin identification)と命名した。AirIDはBioIDと比べ非常に高い活性を示しながらも、TurboIDのように非相互作用タンパク質をビオチン化することはなく、細胞毒性も示さない酵素であった。実際にAirIDをp53やIκBαへ融合し、それぞれの相互作用タンパク質MDM2及びRelAのビオチン化に成功した。さらには、AirIDをCRBNへ融合し、pomalidomideを介したネオ基質SALL4及びIKZF1のビオチン化や、CRL4(CRBN)複合体におけるCUL4とRBX1のビオチン化にも成功した。この結果から、AirIDは単純な相互作用解析だけでなく、molecular glueや複合体解析への応用も期待できる。AirIDはその活性及び特異性の高さから、既存のBioID酵素と比べ、タンパク質の相互作用解析に極めて適した酵素であり、様々なタンパク質研究へ利用可能である。

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