分子細胞生物学

PubMedID 27939309
Title Adhesion-Dependent Wave Generation in Crawling Cells.
Journal Current biology : CB 2017 Jan;27(1):27-38.
Author Barnhart EL,Allard J,Lou SS,Theriot JA,Mogilner A
  • Adhesion-Dependent Wave Generation in Crawling Cells
  • Posted by 山口大学 理学部 中井将吾、岩楯好昭
  • 投稿日 2018/10/10

ダイナミックアクチンネットワークは興奮性がある。移動する細胞におけるフィードバックループは、アクチンダイナミクスの確率的変動を増幅し、結果として、突出した進行波を生成する。波の発生に対する様々な分子的、機械的な相互作用の寄与は、仮足が細胞形態的に複雑であるため、解明しにくいものであった。ここでは、比較的単純な仮足を有する、魚の上皮細胞であるケラトサイトを用いて、アクチンネットワークの興奮性と波生成の基礎となるメカノケミカルフィードバックループを定義した。ケラトサイトは、幅広い先導端が持続的に突出する特徴を持つが、細胞と基質間の接着強度を増加させることで、短い突出が波のように生じる。この波はアクチン重合速度の変動によるものである。そこで筆者らは、アクチン重合を促進する、アクチン抗キャッピングタンパク質のVASPを過剰発現させると、接着強度の高い状態のケラトサイトの波状の先導端が通常時と同様の幅広い持続的な先導端に切り替わることを示した。さらに、VASPは焦点接着と先導端の両方に局在する。これらの結果から、筆者らは、アクチンネットワークの分枝構造による突出の横方向の伝播および細胞膜由来の負の機械的フィードバックによって規則的な進行波を生成することに加えて、接着による前縁からのVASPの局所的な枯渇によって進行波が生じる機械的モデルを作った。筆者らのモデルシュミレーションは、VASPの前縁での局在が振動することを示した。筆者らは、ケラトサイトにおける波発生のモデルが、ほかの細胞においてもアクチンダイナミクスを確立するための一般的なモジュールになりうることを提唱した。

遊走細胞の突出による波と接着との関係は興味深いものでした。本論文では、外観的な波の分析と細胞内分子の分析の両方を行い、モデル化していることから非常に参考になりました。今回の結果やこれからの研究が、通常の細胞の形の形成にも密接にかかわってくるのではないかと期待しています。

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