分子細胞生物学

PubMedID 30901564
Title MST1 Negatively Regulates TNFα-Induced NF-κB Signaling through Modulating LUBAC Activity.
Journal Molecular cell 2019 Mar;73(6):1138-1149.e6.
Author Lee IY,Lim JM,Cho H,Kim E,Kim Y,Oh HK,Yang WS,Roh KH,Park HW,Mo JS,Yoon JH,Song HK,Choi EJ
  • MST1 Negatively Regulates TNFα-Induced NF-κB Signaling through Modulating LUBAC Activity.
  • Posted by 大阪市立大学大学院医学研究科分子病態学 及川大輔
  • 投稿日 2019/05/20

ユビキチンのN末端を介した特殊な連結様式により形成される「直鎖状ユビキチン鎖」は、NF-kBなどの炎症シグナルや細胞死を制御するユニークかつ希少なユビキチン修飾として、近年、大きな注目を集めている。この直鎖状ユビキチンを生成する唯一のE3複合体として、HOIL-1L、HOIP、SHARPINからなるLUBAC(linear ubiquitin chain assembly complex)が同定されている。LUBACの機能不全は、皮膚炎やB細胞リンパ腫を含む多様な疾患と密接に関連することから、多くの研究者が取り組むホットな領域となっている。

今回、筆者らは様々な刺激に応答するキナーゼであるMST1に着目し、MST1がHOIPのRBRドメインと結合し、LDDドメインをリン酸化することで、(おそらく周囲の電荷を変化させることで)LDDドメインとユビキチンの結合を阻害し、直鎖状ユビキチン鎖の生成能を減衰させることを示している。
各種KOを用いた解析から、このMST1を介した制御はTNFa刺激特異的なものであり、CD40LやTERAKによる応答では認められないこと、また、MST1のTNF complex1へのリクルートとMST1の活性化にはTRAF2が必要であることを示し、実際、MST1-KO細胞では、NF-kB活性が亢進することを確認している。

ほとんどの解析が細胞レベルに留まり、マウス個体レベルでの検証が甘い感があるが、新規性という部分では興味深い。
現在、国内外の多数のグループによってHOIPの修飾を介した活性制御/ LUBACの活性制御と、その異常に伴う炎症動態の変調や疾患発症が指摘され始めており、本研究もその流れを汲む興味深い報告である。

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